東日本大震災9年・・続く台風・大雨被害  13:17 2020/07/19

いつものことながら、東日本大震災も1年後・2年後・・と、その時がやってくるとTVも新聞も騒ぎ出して、その日が過ぎると何事もなかったように静かになるのは、いつものこと。その間、復興のことは、政治からも国民からも忘れさられて、知られない人々が、どうにかしなければ・・と、奮闘する姿が、時にNHKの特集等で見せてくれる。     
昨年の台風による各地の災害・洪水等も、映像から遠ざかると、私たちの意識から消えて、民放で「千葉の屋根を覆うブルーシート」が結構残っていて、家の家族で張り替えをする姿をTVで見ることができた。
貧困なる政治・・それは、国民の心の貧しさを映し出しているのかもしれない。


〔(社説)東日本大震災9年 災害法制の早急な見直しを 朝日 2020年3月13日
 避難してきた人々が体育館で雑魚寝をする。災害時には見慣れた光景だ。昨秋の台風15号、19号のときもそうだった。

 だが、なぜ、いつまでも変わらないのだろう。非常時だから仕方ないと思われがちだが、1週間以上も続くのはどうしたことか。被災者の人権がないがしろにされ過ぎている。

 9年前の東日本大震災から、私たちは何を学んだのか。現場での問題を踏まえ、法律や制度はどこまで改善されたのか。

 振り返ると、未曽有の大災害の経験を生かしていない実態が浮かぶ。

 ■めざせ「TKB72」

 避難所をめぐっては「TKB72」という言葉がある。災害発生から72時間以内に、快適で十分な数の「トイレ」、温かい食事をつくれる「キッチン」、簡易な「ベッド」を提供する。

 不潔なトイレや連日の冷めた飯、硬い床が健康を害し、災害関連死につながる。それを防ぐのに役立つ。イタリアなどでの実践例が報告されている。

 国内ではなかなか進まない。より清潔な新型の仮設トイレや段ボールベッドを、拠点になる自治体が備蓄するか、すぐ調達できる段取りをつけておけば、事態は確実に改善される。避難所の運営を定める災害救助法の趣旨にも沿う。その資金を政府が助成するのは当然だろう。

 復興でも課題は見えている。

 ハード面での典型例が、津波被災地で街の再建に多用された土地区画整理事業だ。都市開発の手法で、権利調整や工事に時間がかかる。過疎の被災地で、しかもスピード重視の復興には適さないと言われ続けてきた。

 いかに不向きだったかは、岩手県陸前高田市など沿岸部の多くの造成地に「空き地」が広がっているのを見れば明らかだ。

 高台への集団移転も計画変更が多かった。人口が減る社会の「まちづくり」は難しいのだ。それに対応できる制度が、いま全国で求められている。

 ■現場の声が届かない

 被災者の支援策でも、制度と現実に隔たりがあった。

 たとえば被災者生活再建支援法。住宅の被害状況を全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊に分類し、最大で300万円を支給する。だが、半壊以下には一銭も出ない。半壊が28万戸を数えた被災地から悲鳴があがった。

 全国知事会はすでに、国と都道府県が折半して、半壊世帯まで現金を渡す案を防災担当相に提言した。

 立憲民主、共産など野党も、半壊へ支援を拡大する改正案を国会に提出している。

 だが、実現していない。

 この間、政府は応急修理の経費の一部を負担する制度改正などはした。しかし、小手先の対応というしかない。

 もっと手厚い再建策を用意すべきだ。仙台弁護士会は被災地で実際にかかった補修費に基づき、支援額の上限500万円への増額を求めた。仮設住宅は建設から撤去まで1戸につき1千万円、公営住宅は2千万円かかる。500万円で自宅に住めるなら効率がいい。

 そのうえ仮設住宅公営住宅の戸数を減らせて、行政の負担も軽くなる。

 南海トラフ地震や首都直下型地震では倒壊家屋が多すぎて、仮設住宅は用意できまい。自宅の補修で対応するのが現実的かつ合理的だ。早く制度を準備しておくべきだろう。

 支援制度は複雑で、わかりにくい。

 現状を踏まえて、関西学院大の災害復興制度研究所は昨年、応急救助から生活再建まで切れ目のない支援をめざす被災者総合支援法案を提言した。災害救助法、災害弔慰金支給法と被災者生活再建支援法などを束ねて再構成し、示唆に富む。

 ■「防災庁」が必要だ

 被災地には支援のあり方を根幹から問う声も多い。

 ・「現物給付」の原則は時代遅れ。金銭給付をもっと柔軟に活用すべきだ。

 ・みずから申請しなければ支援を受けられない「申請主義」が被災者を切り捨てている。

 ・被災者生活再建支援法の支援対象は被災世帯であり、被災者個人の事情は考慮されない、などなどだ。

 こうした声を受け、被災者一人ひとりに支援メニューをつくる「災害ケースマネジメント」が注目されている。

 必要な支援は資金、仕事、教育、医療など多岐にわたり、人それぞれで違う。それらを行政職員らが聞き取り、複数の制度を組み合わせたプランを練る。

 だが、従来にない対応は既存の省庁縦割りの制度の壁にぶつかりがちだ。乗り越えるには、省庁横断的な施策が要る。

 政府は来春から復興庁を10年間延長するが、各省からの出向者を集めた現状では、そういう大胆な対応は望めない。

 だからこそ、防災から復興までを担う組織で、専門的な人材を育て、災害の経験を継承し活用する必要がある。政府は後ろ向きだが、やはり「防災庁」の創設を検討すべきだ。〕