世界の人々の意識とは・・   2021/05/14

コロナが始まって1年が経過・・オリンピックを前にして、日本はその対策ご遅れて、国民の疑問とともに、外国からの声も否定的なものが目立ってきた。私は、東京の決定の段階から、政治的なウソで獲得したことに、そしてスポーツに対する人々の意識と、社会的な困窮者たちの現状とのギャップに疑問があったことも関連している。そしていま、コロナとともに米国大統領選ではっきりした米国と世界の人々の意識状況の変化が見えてきて、民主主義にも疑問はあるが、社会の世界の人々の意識構造の移り変わりに、最近になって気づかされている。

〔 民主主義、どこへ向かう? コロナ禍で「退潮」加速  佐藤武嗣  朝日 2020年12月20日
日本の外交・安全保障政策を立体的に捉える 民主主義体制が世界で退潮しはじめ、中国やロシアなどの独裁・専制政治といった権威主義体制が勢いを増している――。
 そう聞いて、「ん? それは『米国第一』を掲げたトランプ大統領の登場や英国の欧州連合EU)離脱で、情勢を誇張しているだけではないのか」と思う方も多いと思います。ところが、実態は我々の想像よりはるかに深刻なようです。新型コロナウイルスの感染拡大によって、「民主主義の退潮」に拍車がかかっている、というのです。
 私は、外務省や防衛省などの役所取材に加え、米政府関係者や日米専門家、学者、シンクタンクなどの勉強会やイベントにも参加しています。そうした外交・安保コミュニティーのなかでも、にわかに「民主主義の退潮」がクローズアップされつつあり、国際社会の地殻変動を感じています。
 安全保障・軍事防衛問題に関する理論的・実証的な研究を行う国際安全保障学会の年次総会が今月初旬にあり、私も参加しました。そこでは「民主主義と権威主義のどちらに優位性があるのか」が議題の一つに浮上しました。
 「昨年、世界で民主主義国・地域は87で、非民主主義国は92。18年ぶりに民主主義国が少数派に転落した」
 報告者から、そんなスウェーデンの調査機関「V-Dem」のリポートが紹介され、このコロナ禍で「中国型監視社会モデルの方が効率的に機能しているように見える」と懸念が示されました。別の報告者も、監視社会や個人のプライバシー侵害を嫌う民主主義国では、規制が政府の意のままにいかないと指摘。それを無視できる権威主義体制は「効率的でデジタル社会と相性がいい」。そんな危惧も語られました。
 コロナ発生前のデータをまとめたV-Demの報告書よりも、より深刻なのは、コロナを受けて世界の民主主義の動向を今年10月に米NGO「フリーダムハウス」が発表した報告書です。「コロナウイルスの発生以来、80カ国で民主主義と人権の状況が悪化している」とし、こう指摘しています。
 「当局者や治安機関が民間人に暴力を振るい、正当な理由なしに人々を拘束し、法的権限を逸脱している。政府はまた、公衆衛生を確保する必要限度を超え、特別な権限を自らに与えるのを正当化するため、パンデミックを利用している」
 こうした世界的な「民主主義の退潮」に懸念を抱き、日本で活動しているのが日本国際交流センターです。2018年、米国やアジアの専門家と「民主主義の未来プロジェクト」を立ち上げ、米国やアジアの専門家と対話を深め、世界における民主主義の現状に関するニュースもホームページで発信しています。
 活動の中心的役割を担っているのが、国連前事務次長で、現在も国連事務総長特別顧問を務める高須幸雄さん(74)です。同センターが11月24日に主催し、英語で行われたイベントに、私もウェブで参加しました。司会役の高須さんは「民主主義の危機が元々あったところに、新型コロナ感染症拡大が起き、ますます切迫した問題になっている」と問題提起しました。
 韓国の学者からは「ロックダウンや隔離政策で、民主主義国家でも人々の自由がむしばまれ、反対勢力を抑え込む強権政治も見受けられ、報道の自由も抑圧されている。世界で民主主義を再生させ、衰退に歯止めをかけるリーダーも不在だ」と訴えました。一方、民主的に選ばれたモディ首相率いるインド出身の学者からも「コロナでは脆弱(ぜいじゃく)な人ほど最も打撃を受けている。インドでも権威主義的対応が目立ち、民主主義が後退している」との報告がありました。
 中国は自国で感染拡大を封じ込め、経済回復をどの国よりも早く脱したように見える半面、なりふり構わぬ「マスク外交」や香港での市民抑圧で批判も浴び、国際的なイメージ低下を招いているようにも見えます。ですが、香港の民主派議員を逮捕するなど、習近平(シーチンピン)体制が強権を振るうために成立させた「香港国家安全維持法」に、どれだけの国がノーをつきつけたのでしょうか。
国安法「支持」、「反対」の2倍
 この中国の国安法について、6月の国連人権理事会で審議が行われ、「反対」を投じたのは日本や英国、豪州など27カ国。一方、国安法への「支持」を表明した国はエジプトやサウジアラビア北朝鮮など57カ国で、「反対」の約2倍でした。
 米国のトランプ政権は18年に、国連人権理事会から離脱を発表しています。市民抑圧や言論の自由の封じ込め、不当逮捕など問題の多い中国の対応が、国連の場で支持される格好になっているのには、驚きを禁じえません。
 日本国際交流センターのイベント後、改めて高須さんにインタビューしました。高須さんがプロジェクトを立ち上げたのは「日本が民主化を支援してきたカンボジアミャンマー、フィリピンでどんどん民主主義が劣化している」と懸念したからだそうです。
 また、高須さんはコロナの影響について「報道の自由を制限し、プライバシー管理を強化し、民主的選挙を延期し、少数派や市民社会、特に反政府勢力を弾圧するなど、コロナという危機を利用した強権政治がはびこっている」と危惧を語りました。米国やアジアの学者らと議論した結果を踏まえ、米国の戦略国際問題研究所CSIS)のマイケル・グリーン氏らと、民主主義における大事な原則「サニーランズ原則」を発表しました。
 そこでは「政府は、自由・公正な選挙と、透明性・適切な行動を通じて、国民に説明責任を果たし、公共財の公平な分配、透明性ある行動、すべての国民を包含する政策を通じて、人間の尊厳と基本的価値を守り促進すべきである」といった「多様な民主主義」や、「透明性と説明責任のある政府の統治を確保するうえでの必須条件」として「独立したメディア」が存在するかなど10項目を掲げ、各国や各機関、市民らの幅広い連携を通じて、こうした民主主義的価値観を尊重する規範を国際社会やアジアで浸透させようと試みています。
「歴史の終わり」 その先の「不満」
 この原則を見ていると、民主主義を標榜(ひょうぼう)している日本の政権でも、説明責任の回避や、日本学術会議任命拒否をめぐる透明性の欠如など、日本の「民主統治度」に首をかしげざるを得ない項目がいくつかあるのにも気づかされます。
 この「サニーランズ原則」を出すにあたり、当初米側は「Democratic Unity(民主主義の団結)」という言葉を提案したそうですが、高須さんは、排他的に米国的な民主主義史観を押しつけるのではなく、「Democratic Governance(民主的な統治)」を掲げることで、多様な民主主義形態の国のネットワークをアジア主導で広げる必要があると主張したそうです。
 米国では、バイデン次期大統領が「民主主義サミット」の開催を公約していて、どんな国が参加し、どのようなメッセージを出すのか注目されます。
 民主主義はどこへ向かうのでしょうか。
 米ソの冷戦が1989年に終結してソ連が崩壊し、グローバル化によって自由や人権、法の支配といった民主主義的価値観が世界に広がり、国際秩序を形作っていく――。冷戦終結を受け、米政治学者のフランシス・フクヤマさんは、当時の著書「歴史の終わり」で、民主主義に軍配が上がり、民主主義か、共産主義か、というイデオロギー闘争の「歴史」は「終わった」と論じました。
 私もそう確信していました。ですが、そのフクヤマさんが今年10月、「リベラリズムとそれへの不満」と題するリポートを発表。「今日幅広いコンセンサスがあるのは、世界の多くの地域で民主主義が攻撃を受け、後退しているということだ。中国やロシアのような権威主義的国家だけでなく、多くの民主主義国家で、選ばれたポピュリストたちによって、民主主義が挑戦を受けている」。そう指摘しました。
 日本はどのような役割を果たすべきなのでしょうか。高須さんは「ASEAN東南アジア諸国連合)をはじめ、アジア太平洋地域では日本への信頼も厚く、民主的価値を共に追求するために、政府だけでなく、市民社会のレベルでも連携を広げていくことが必要ではないか。安定的な国際環境をつくることは日本にも利益になる」と語ります。
 日本の外交・安全保障政策の大方針である国家安全保障戦略にも、ミサイル防衛などと並び、「日本の対外政策の中心として、民主的な統治の問題を据えるべきだ」と問題提起しています。 〕