子供の不登校から学ぶ  2023/10/16

不登校の子供に、親・教師・カウンセラーが向かう方向は‥疑うこともなく「子供が学校に行く」ことだが、それは子供にとって、親・教師・・さらに学校や社会にとって「良いこと・好ましいこと」なのだろうか。それは不登校の解決と思われて、そこに疑問の余地はないようだ。子供が不登校をするのは、子供に原因があるという一方的な見方をするから、学校や教育制度を疑うという発想は・・・ほとんど見られない。教師もカウンセラーも、子供の姿や行動から、我が身を振り返って、その中から学ぶということが見られないのは、さびしいことである。 
子どもたちは、すでに学校に行く前から、生まれた時から・・親の目で、社会に適応し、競争に勝って・・より恵まれた地位について、財産をより多く獲得して、自分の望み・欲望を満たすことに・・・子育ては費やされ、学校教育に受け継がれていく。それは、いまの学校でのいじめや暴力に、社会の格差や犯罪に、戦争にも受け継がれていく。
努力や競争は、科学技術の発展、人間の幸福につながるという考えを否定する人はいないようで、その影の部分に目を向けることは重要なことではないか。
だが、地球上の資源・・それは人間の競争で勝ち抜いた‥ごくわずかの人たちによって独占され、落ちこぼれた多数の貧者や恵まれない多くの人々を生み出し、いじめから犯罪や戦争を生み出している。それが・・人間の歴史というものの本質なのかもしれない。地球の資源から動植物までが人間の、欲望の犠牲になっているのは事実であり、地球の温暖化をもたらしている。
人間が、人間の欲望が・・地球を破壊し、人間も他の生物も、生きられない世界に向かっている。

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不登校最多に 最適な支援 一人一人に  朝日(社説) 2023年10月15日 

 コロナ禍が、今も子どもに悪影響を及ぼしている。そう実感させられる調査結果だ。国や自治体、学校、専門家らが協力し、一人一人の子どもに最適な支援を進める体制を整えなければならない。

 年間30日以上登校せず、「不登校」とされた小中学生の数が昨年度30万人と、過去最多を更新した。35人のクラスに1人は不登校の子がいることになる。文部科学省は、コロナ禍で学校や家庭の環境が変わり、生活リズムを崩した子などが多いことも背景にあるとみている。

 増加自体は必ずしもネガティブな面ばかりではない。状況によって学校を休むことに理解を示す保護者や教員が増えたり、地元の教育支援センターやフリースクールなど、学校以外の居場所が増えたりした影響もあるからだ。

 だが不登校の小中学生の38%、11万人以上は、学校内外の組織のどこからも支援を受けていない。しかも、こうした子の人数や割合は年々増えている。多様な子を受け入れる施設が足りないうえ、教員らの態勢が整わないために接触さえできず関係を構築できていない家庭もある。

 今回の結果を受け、文科省はこども家庭庁と連携して、教室以外の場所やオンラインで学べる体制を強化するなど、支援が届かない子を減らす取り組みを急ぐ。政府は早急に効果的な方法を見つけ、必要な予算を惜しまずに投入してほしい。

 不登校以外にも、「病気」「その他」の理由で小中学校を30日以上欠席する子が13万人以上いる。こうした子についても、取りこぼすことなく支援しなければならない。

 一方、小中高生の自殺者数は減少に転じない。昨年度は411人と、コロナ禍が本格化した20年度の415人に次いで多かった。3年連続で増えた小学生と中学生が、特に心配だ。

 小中高でのいじめの認知件数や暴力行為の発生件数も、過去最多だった。いずれの問題も、学校が早めに気づき、解決をめざすことが対策の基本だ。だが、働き方改革が進まない現状では、教員だけでは適切な対応ができないケースも多い。多忙のあまり問題を小さくとらえ、取るべき対応が遅れる危険も増す。

 状況を適切に判断できる教員を増やすとともに、子どもの相談に乗るスクールカウンセラーらの充実も急がなければならない。スクールソーシャルワーカーなどが、保護者や自治体の福祉部門、NPOなどをつなぎ、その子に合った最適な支援を多面的に考えることが大切だ。

カードに潜むこと   2023/06/28

2万円分のポイントまでつけて、カードの登録を急いでいる政府は、次々に出てくる健康保険のミスやトラブルで困惑する医療関係者の戸惑いにもかかわらず、
強引に進めようとしている。いまでも、何枚かあるカードの1枚でも紛失して、危機感を持つのが・・医療から運転免許証まで一緒こたにすれば、便利なんてことは無くしてしまう不安や危険性にかすんでしまうと、私は考える。
これは単なるカードの問題ではなく、自民党政治を支える、国民という名の人々の意識の問題というしかないようだ。それは人々の生活から、子育て、教育、経済、文化、スポーツにまでもおよんでいる。カードにしても、ウクライナにしても・・それは、私たち個人の意識の問題ではないか。

[ マイナカードと保険証      朝日(天声人語) 2023年6月25日
 最新のゲーム機にするか、動物図鑑にするか。誕生日のプレゼントを子どもが迷う。こんな時、頭ごなしに親が図鑑と決めてもだめなことが多い。「こっちの方が長く楽しめるよ」などと、財布と相談しながら、うまく結論を導く。大人はずるいのだ▼本人が決めたように思わせながら、じつはそう仕向けている。これが親子の小さな駆け引きならニヤリとするが、政治がらみとなれば笑っていられない。健康保険証が廃止されてマイナカードと一体となる件である▼マイナンバー法は先の国会であれこれ改正されたが、カードの取得はあいかわらず任意とされている。実態はどうだろう。もし保険証のかわりに資格確認書をもらっても、1年ごとの更新が必要になる。不便を押しつけてカードに切り替えさせたい思惑が見え見えだ▼先ごろ閣議決定された「デジタル社会重点計画」では、母子健康手帳と一体化させる方針も示された。ハローワークでの求職の受け付けでも、カードが必要になる。図書館カードや国立大の授業の出欠管理にも広がる▼外堀をどんどん埋めておいて、でもカードの取得は自分で選んだことでしょうと、政府は涼しい顔をする。だとしたら、じつにずるい。強引な手法は愛想をつかされるだろう▼こんな至言を見つけた。利用者を差しおいて、行政手続きのオンライン化そのものが「自己目的とならないように」とある。ほかならぬ重点計画の文書だ。もう一度、河野太郎デジタル相は熟読したほうがいい。]    

私たちは、いま、地球の・・いつ・どこにいるのか   2023/01/10

ウクライナでは、人々が、知らない間に殺されている。多くの生物が生きる地球は、人間によってどのようにされてしまうのだろうか・・・。教育・科学技術・文明の発達とは何なのか。

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〔(社説)人口80億人 地球の限界を考える  朝日 2023年1月10日 

人間のくらしは地球何個分?
 世界の人口が昨年11月に国連の推計で80億人を超えた。

 人間は文明の発達とともに養える人口を増やしてきた。技術が進歩して食糧を増産し、利用できる土地や資源も広がった。農業や産業革命といった大きな技術革新で急速に増えてきた。

 今後、人間が必要とする物資を効率的に得る飛躍的な技術革新が起きたり、人口が減少して食糧やエネルギーを分かち合ったりして暮らしていけば、明るい未来を描けそうだ、といった楽観論もあるかもしれない。

 半面、地球が生産できる生物資源も、利用できる地下資源も無限ではない。

 いま、地球は、どれくらいの人口を抱えられるのだろうか。

 ■地球の力

 人間が地球環境にどれだけの負荷を与えているかを知るひとつの指標がある。「エコロジカル・フットプリント」という。「生態系を踏みつけている足跡」という意味で、カナダの学者らが提唱した。

 人間の生活や経済活動によって農地や森林などの陸地や、漁場となる海をどれだけ使っているかを示す。統計データなどを元に、食糧や衣類の生産、廃棄物の分解や化石燃料の活用で排出された二酸化炭素を吸収するのに必要な土地なども計算に入れる。地球が1年間でまかなえる量で人間が生活をしているかが、推定できる。

 国際組織「グローバル・フットプリント・ネットワーク」によると、世界人口が30億人余りだった1961年には人間は地球0・7個分の生活だったが、71年に1個分を超え、いまは1・8個分の暮らしだ。

 もし、世界中の人々が日本と同じ暮らしをしたら、地球が2・9個必要になる。米国と同じなら5・1個、中国なら2・4個、インドなら0・8個だ。

 裕福な生活ほど、1人あたりの消費は増える。同じ距離の移動でも、飛行機は鉄道や船より大量の燃料を使い、牛肉や豚肉は穀物よりも生産段階で多くの資源が必要だ。もちろん絶対的な指標ではないが、豊かで便利な生活は、それだけ未来に負荷をかけているさまが浮かぶ。

 ■高まる危機感

 昨年末開かれた生物多様性条約締約国会議(COP15)は、2030年までに地球の30%を保全する「30by30」など、生態系を守る新目標で合意した。高いハードルだが、危機感を世界が共有するあらわれでもある。化石燃料の消費やそれを原因とする気候変動も、地球に大きく負荷をかける。食糧生産のために森林を切り開いて農地を増やすのも同様だ。

 地球は46億年の歴史で5回の大量絶滅を経験してきた。現在は、6500万年前に恐竜などが絶滅した時代に続く第6の大量絶滅時代と呼ばれ、当時よりも急速に生物種が減っている。約800万種いるとされる動植物のうち約100万種が絶滅の危機に直面し、絶滅の勢いは、過去1千万年間の平均の数十倍から数百倍も早まっている。人間による破壊力はすさまじい。

 ■循環型社会にむけて

 自然の破壊が一定の境界を越えると回復不可能となり、人類が繁栄を続けることができない。「プラネタリー・バウンダリー」(地球の限界)という考え方では、人間が地球の機能に変化を引き起こす九つの要素を特定して、越えてはいけない境界を示している。

 すでに「生物多様性」「窒素とリンの循環」「気候変動」「土地利用の変化」でリスクが顕在化して、人間が安全に活動していく範囲を超えていると分析される。窒素やリンは肥料として食糧生産を支えるが、過剰だと川や海の汚染を招く。

 地球の人口は2050年代に100億人を超え、2080年代に104億人でピークを迎えると推定されている。その先、減少を続けて安定的な人口になっていくとしても、それまで、生活を支える地球の限界を人類は超えずにすむのだろうか。

 国を超える共通課題に一つひとつ取り組み、社会のあり方を考え直すことが求められる。循環型の社会づくりは、地球のためでも自然のためでもなく、人間の未来のためだ。

 80億人突破を機に、地球の現状と生活を見つめ直し、子孫に何を残せるか考えていきたい。〕

 

政治と国民の意識  2022/10/24

私は、この十数年の政治・社会の中で、 森友・加計問題から桜に至るウソを見てきて、政治家はもちろんのこと・・そんな政治を支える国民こそが、発言や行動が腐ってきているのではないかと思える。それは、自民党も、トランプも、プーチンに至る・・こ社会と世界の背景が見えてきて、人間とはどういう生き物なのか、そして地球はどうなっていくのかの課題に至るのです。

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〔(多事奏論)国葬と岸田首相 実にこわい、剣が峰で気概なし 朝日 高橋純子 2022年9月28日 

 この原稿は、国葬がどのように執り行われ、そのとき日本社会がいかなる相貌(そうぼう)をあらわしたかを最後まで見届けることなく締め切りを迎えています。「弔意の強制はしない」とされましたがみなさん、どうでしたか? 私は「静粛に」という抑圧をひしひしと感じつつ、パソコンに向かいました。強制でなければ自由というわけでは決してない。国葬は、やるべきでなかった。

     *

 自民党二階俊博元幹事長は岸田文雄内閣の支持率下落を受けて「安全運転だけではダメだ」と注文をつけたそうだけれど、はて、岸田首相はそもそも「安全運転」だっただろうか? 違うな。

 確かにスピードはまったく出ていない。だが、ふらふらと右に寄ったり左に寄ったり、ウィンカーを出しつつ直進を続けたり、「なんでいま?」というタイミングでアクセルを、「どうしてここで?」な場所でブレーキを踏んだりする。周りがよく見えていないのか、はなから見ちゃいないのか、状況と動作がかみあっておらず、何をどうしたいのか意図がさっぱり読めない。

 これは実に地味にこわい。猛スピードで周囲を威圧し、およそブレーキを踏むことがなかった安倍晋三内閣の「暴走運転」に勝るとも劣らぬこわさである。要するに首相はドライビングセンスがない。つまり政治センスがない。ああ、身もふたもない。

 国葬をやると表明してから国会で説明するまでの2カ月近く、反対の世論が雪だるま式にふくらむのを、なんら手を打たずに放っておいたことが首相のセンスのなさをなにより物語っている。そしてようやく臨んだ国会では、国葬をやる理由(1)(2)(3)(4)を並べ、それを何度も「丁寧に」繰り返すだけ。異論と対峙(たいじ)しているという緊張感も、己の弁舌で窮状を打開してみせようという気概のかけらも感じられない。

 国葬が旧統一教会にお墨付きを与えることになるのではないか。評価が割れる安倍氏国葬を行う時、社会に生じる亀裂をどう修復するつもりなのか――あまたの問いを煎じ詰めれば、「あなたはいったいこの国をどこに連れて行くつもりなのか?」。

 まさに首相の真価が問われる、のるかそるかの大舞台を自ら呼び込んでしまっているのに、ご当人はどこ吹く風、剣が峰でフォークダンス。実に地味にこわい。

 首相はどうもわかっていないようだが、「聞く力」を掲げるからには強権的で新自由主義的な安倍・菅路線を変えてくれるかもと、支持・不支持の判断を留保した中間層が少なからずいた。首相の存在感のなさが好感につながるという奇妙な幸運に浴していたのに、国葬を「独断」し、うかつにも示してしまった。無用の存在感を。

 世論を二分する重大な判断をする以上は、前面に出て、自らの「肉声」で勝負せねばならない。説明と、説得と。その能力も覚悟も欠いたまま、保守層にこびを売るという安易な道を選び、結果、中間層に見切られてしまったのだから世話はない。

     *

 社会の分断をもたらす国葬を実施した首相の罪は重い。だからこそ、あえてひとつ提案したい。自ら先頭に立って安倍氏を盛大に悼んだことを奇貨として、「安倍政治」との決別を宣言し、国葬を新たな出発の機会と位置づけてしまってはいかがか。いまとなっては唯一の、意味ある国葬の「使い道」であり、首相にとって、日本政治にとっても起死回生のラストチャンスかもしれない。勝負に出る価値は十分あると考えるが、どうだろう?……って、答えは聞かなくてもわかる、ような気がする。

 それにつけても、安倍氏の「残像」をいまだ振り払えない岸田政権と自民党のどん詰まりぶりはかなり深刻だ。「一枚岩」の組織は強いようで、オルタナティブをはぐくめないもろさを別に抱える。「安倍一強」に酔いしれてきたツケは今後じわじわ回ってくることだろう。震えて待たれよ。

 (編集委員

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「安倍元首相は自らが生み出した『長期腐敗体制』の犠牲者です」 思想史家・白井聡が語る銃撃事件
小林 空   2022/07/27

連続在職日数2822日、憲政史上最長の政権を築いた安倍晋三元首相は、アベノミクス集団的自衛権の行使など、賛否両論の政策を推し進めた。またスキャンダルにまみれたモリカケ問題では、国民を二分する激しい対立を引き起こしもした。


2012年12月に成立した第2次安倍政権とは何だったのか。安倍氏が殺害されるひと月前、奇しくもその実態を論考した『長期腐敗体制』(角川新書)を上梓していたのが、思想史家であり政治学者の白井聡京都精華大学准教授だった。

長期腐敗体制・・・数々の無能、不正、腐敗・・恩恵にあずかる一部の既得権者を押し上げる一方で、多くの国民の生活は疲弊・・安倍氏自身も長期腐敗体制の犠牲者となったと言うべき・・・000

官僚への強力な権力の源泉を安倍政権は掌握し政治主導を制度としては確立したのです。
――そのため本書では、2012年体制は、「腐敗」「不正」「無能」の三拍子がそろっていると指摘されています。

モリカケ問題や桜を見る会など不正や腐敗もありましたが、特に無能さを露呈したのがアベノミクスでした。安倍氏は「株価が上がり、有効求人倍率は上がり、雇用創出に成功した」と主張しましたが、すべてはマヤカシだったのではないか。まさに今そのツケが回ってきています。00000

アベノミクスの柱は日本銀行を「政治主導」して行われた異次元の金融緩和でした。これのせいで、いま日本の経済政策はにっちもさっちもいかなくなっている。アメリカをはじめ諸外国がインフレに苦しみ金融引き締めを急ぐ中で、日米の金利差が拡大し、終わりのない円安にあえぐ結果になっている。年末には対ドルで150円という水準の円安に向かうとの観測も流れています。

そもそも異次元金融緩和はカンフル剤のようなもので、注射することで日本経済が活性化するきっかけをつくるという政策だったはずです。しかし、そもそも資金需要のない日本経済に、異次元緩和で大量のマネーを供給し続けただけでした。そのお金は日銀の当座預金に積みあがるばかりで、市中に流れ出ることはなく、新規産業も生まれなければ、労働者の待遇も改善しなかった。

雇用は非正規ばかりが増える一方で、給料も上がらない。こんな状態で、個人消費が喚起されるはずもない。さらには社会保障費は右肩上がり。そこへもってきて、いまはまた円安やエネルギー価格高騰の悪いインフレで、家計は圧迫されています。2012年体制の下で日本がどれほど貧しくなったか、目を覆うばかりです。日本人の経済生活は破綻に向かっています。

設備投資の観点からみても、エネルギー問題から見ても、深刻なのは再生可能エネルギーへの投資がまったく不足していたことです。世界的にもカーボンニュートラルが追求目標となっている中、自然エネルギーへの転換において、日本はヨーロッパ諸国から大きく水をあけられる状況になっている。

10年前、20年前には、京セラや三洋電機(現パナソニック)が世界でトップを走っていた太陽光発電の電池パネルの生産は、中国のメーカーに抜かれて見る影もありません。そして今、電力不足で苦しむという新興国と変わらない状態になっている。

「安倍元首相は自らが生み出した『長期腐敗体制』の犠牲者です」 思想史家・白井聡が語る銃撃事件
現代ビジネス
「安倍元首相は自らが生み出した『長期腐敗体制』の犠牲者です」 思想史家・白井聡が語る銃撃事件
「縁故を優先する考え方」が蔓延る
――異次元の金融緩和は日本の経済界を突き動かすこともできなかったということですね。そして、景気は上向くことはなく、いまも金融緩和をやめられない。これが円安を招いている実態と言えそうです。

アベノミクスの失敗は、政治家だけでなく経済界にも大きな責任があると思います。コロナ禍でムリヤリ開催されたオリンピックが典型ですが、国策にはどんなに馬鹿らしいことでも「万歳! 万歳!」と言って一枚かませてもらおうと必死になるが、本来、やるべき政策が民間からボトムアップされることはありません。

そして、労賃カットと円安誘導という最も安易な手段で収益確保です。経営者として本来あるべき展望を欠き、2012年体制を支えることで、利権にぶら下がる商売を続けてしまった。

日本の今の在り方はネポディズム(ものごとの正しさよりも縁故を優先する考え方)資本主義と呼んでもいいでしょう。他方、政治的には権威主義国家となり下がってしまった。

――鯛は頭から腐ると言いますが、まさに「無能」さを露呈した頭(トップ)から日本経済の衰退は進んでいる。それなのに、それをくつがえす民間の活力が湧き上がらない。

その通りです。だから長いものに巻かれることしか考えない人間が増えている。文化面で見るべきものがあればまだ救いがあります。歴史的に見ても国の衰退期には、退廃的で美しい文化が生まれることもありますが、それも感じることはできません。政治、経済、文化、どの面をとっても閉塞と停滞しかありません。精神的に死に絶えつつある気すらします。

ロシア交渉も成果なし
――安倍政権で比較的評価の高い外交・安全保障についても、白井さんは「目も当てられない」と指摘しています。

それは長期的な視点やそのための主体性、自主性が感じられないからです。これは2012年体制の外交に首尾一貫しているのですが、「国際社会で日本が生きていく道はこうなのだ」という確たるビジョンがない。

安倍政権は、前半期には中国を抑え込むために対米追従・従属を深める外交でした。そのためにTPPに参加したし、また、集団的自衛権の行使容認というほとんど改憲に等しいことまでやりました。ところが後半になると徐々に対米従属一本足打法を修正し始めます。

顕著なのが中国への接近です。そもそも日本経済が中国との関係なしに成り立たないことは、分かりきったことでした。その現実に促される形で、関係改善を余儀なくされたというのが真相でしょう。

実際、2020年には中国の習近平国家主席国賓として招くはずでした。これはコロナ禍で中止となってしまいましたが。しかしながら、総理を退任してからの安倍氏は、台湾有事をことさら宣伝するようになり、対中緊張を煽りました。

要するに、何がやりたいのかさっぱりわからないのです。こうしたビジョンのなさは外交では致命的に作用します。それがロシア交渉で露呈しました。

2014年ロシアがクリミア併合を行いアメリカとの緊張が高まっている最中、安倍氏北方領土問題の解決と平和条約締結を目標としてプーチン大統領と27回首脳会談を行いました。

米露緊張の中でのロシア交渉に、プーチン大統領は「アメリカの機嫌を損ねるのはわかっているよな、覚悟しているのか」と様々な形で問いかけます。ところが、日本からの回答はなく、ここでも安倍氏の外交姿勢は曖昧なままに進められた。当然、プーチン大統領の日本への不信を払しょくできるはずもなく、ロシア交渉は何の成果も得られませんでした。

コロナ対応に追われた菅政権での外交はほとんどなく、岸田政権になってからは再び対米従属一辺倒へと戻りつつあります。

――ウクライナ情勢を見ても、米中対立を見ても、これから地政学的に大きな変化は避けられそうにありません。

ロシアの侵攻に対してウクライナは健闘していますが、ロシアが地力で勝るという現実が徐々に明らかになってきました。さらにアメリカ主導で対露経済制裁が行われているわけですが、参加しているのは先進国だけ。制裁を掛ければロシアは立ちいかなくなるだろうという見込みで始めたわけですが、あまり効いていない。現実問題として先進国に世界をコントロールする力などないことが証明されつつあります。

そういう混沌とした世界情勢の中で、現状分析もあやふやでビジョンを明確に示さない2012年体制が対応できるのか。難しいだろうと言わざるを得ません。

――ビジョンのない長期腐敗体制は、なぜ生まれてしまったのでしょうか。

無能と不正、腐敗の体制がなぜできたのかを問うべきでしょう。今回の参議院選挙でも自民党が大勝したわけですが、それは国民がこの体制を支持し続けているからにほかなりません。

本来、民主主義国家では、国民の不満が高まれば為政者にノーが突き付けられる。イギリスでは7月7日にジョンソン首相も辞任に追い込まれたわけですが、きっかけはコロナ禍の行動制限に違反してパーティを開いていたことでした。こうした権力者の不正を罰する国民の姿勢は、少なくとも2012年体制ができてから、日本では影を潜めています。

批判に値することが続けばトップのクビが挿げ替えられる。この当たり前の民主主義のメカニズムが、日本では働かなくなっている。もはや日本では選挙が機能していないのではないかと、選挙をやる意味すら問われる状況になってきてしまっています。

その意味で、冒頭に語ったように安倍氏は2012年体制の犠牲者と言えるのではないでしょうか。本来であれば、無能と不正、腐敗が明らかとなれば、どこかでブレーキがかかるはずだったのですからね。

国葬に反対する理由
私自身はもう、一つ一つの選挙の結果に一喜一憂しなくなりました。結局は今のような政治状況を作っている社会の質、社会を構成している国民の質が問題の本質なのです。

経済的に苦しくなっているのに、投票率は上がらない。明らかに統治パフォーマンスの低い「長期腐敗体制」を支持してしまう。危機を回避する本能が、日本からどんどん失われているのではないか。日本人は生命力を失いつつある。そんな危機的な状況に陥っているのだと思います。

最後に、安倍元首相の国葬に私は反対です。最大の理由は、国家・国民に対する貢献がないからです。岸田首相は、民主主義への挑戦には屈しない意思を示すというようなことを言っていますが、そもそも山上容疑者による犯行は民主主義への攻撃ではない。家庭と彼個人の人生を台無しにされたことによる恨みが動機です。

選挙期間中の犯行となったのは、やりやすかったからにすぎない。ですから、国葬の岸田政権による政治利用は明らかであって、それは2012年体制を維持するのだという意思表明にほかなりません。岸田氏も、国葬を支持する人たちも、自分の権力の維持や自分の自意識のかさ上げのために、安倍氏を亡くなってまで利用するのはいい加減にしろ、と言いたいです。

現代ビジネス
「安倍元首相は自らが生み出した『長期腐敗体制』の犠牲者です」 思想史家・白井聡が語る銃撃事件 〕

 

 

民主主義と暴力  2022/07/14

安倍晋三元首相が凶弾に倒れて、犯人の若者には当然のことながら・・避難一色である。「民主主義の危機」から始まって朝日(社説)では「民主主義の破壊許さぬ」と書いている。

私はその「民主主義」そのものにも疑問を感じているので、それを結びつけるような感覚はあまりなく、「民主主義とは何なのか」という視点と「暴力」はそれぞれの問題と考えている。

歴史的に見ても、いまの社会や世界を見ても、社会は暴力的であり、戦争は絶えない。ロシアは、相手の兵士に限らず市民や民家と、公共の建物も区別なく破壊を繰り返している。
いくら科学技術が発達して、生活がとてつもなく便利になったとしても、人間の暴力性は変わらないようだ。いったい何で人間は暴力的なのだろうか・・。


その原因は子育てから始まる教育に、そして社会の・・つまり、誰の心にもある「願望と成功」を目的とする人間の心にあると私は思っている。簡単に言えば、親も社会も「努力と成功」を目指して子供を育てるのだが、そのことに疑問を感じることはほとんどないのではないか。競争に勝って・・少しでいい地位に、高い位置に登りつめたい、成功したい・・それは他者から羨望の目で見られ、尊敬の目で見られるのが解っているのだ。

それに限らず、成功は地位を意味し、地位は他者の上に立って「他者を支配」することになって、そこに暴力や破壊の発生する可能性も出てくる。

だが成功者がいれば、敗者もいて、他者からどのような目で見られ、どのように扱われるかが全く違ってくるのだ。成功者と敗者では、生活に必要な資金も財産も違うから、生活の質が全く違ってもくるし、子供はその親から受ける恩恵によって、子供の生活から財産も地位ですら違ってくる。社会とは、そのように作られているのだ・・人間の願望によって。

そういう意味でも、暴力を別にしても・・安倍の死については、私は異なった別の視点から見ると、長い間日本の政治社会に巣食っていた「安倍のウソ・ごまかし」が多少なりとも改善することが期待できるような気がする。「偉大な政治家を失った」と、テレビも新聞も同じ言葉を繰り返して、花を持って訪れる人々の列ができるのだが・・・。

いったい彼は何をしてきたのか・・

最大派閥「安倍派」を率いて、いままでにも「ウソだったら、自民党も議員もやめる」と、大見得を切って、結局司法は「不起訴」にする路線が出来上がっているようだ。

民主的だとか、平和などという言葉にだまされてはいけない。森友・加計・サクラをはじめとするさまざまな問題を記録しておくのは・・いつも書いている・・朝日や「身辺雑記」から拾っておくのも意味のあることかもしれない。

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〔(多事奏論)バラマキ合戦 愛されること望む政治の果て 原真人  朝日 2021年11月10日 
 池田勇人の「所得倍増」、田中角栄の「日本列島改造論」。時の政権がバラ色の未来を描き、国民に希望や夢を与える。そんな試みはいつの時代にもある。

 最近では第2次安倍政権の「アベノミクス」がそうだ。異次元の量的金融緩和を起爆剤に高成長を実現、強い日本経済を取り戻す、と高らかに宣言した。

 とはいえ、国が貧しく国民が若くて人口が増えていた時代と、経済が成熟し超高齢化と人口減少が進む現代とでは求められる夢や希望のかたちがまったく異なる。

 アベノミクスの掲げる夢は時代を誤っているし、その手法はあまりに危険だ。私は紙面で警鐘を鳴らしてきたが、その懸念がどれだけの人に共有されたかわからない。


     *

 岸田政権でもアベノミクス体制は続く。異常な金融緩和にどっぷり依存し、ときに給付金のようなバラマキ策もとる。陰では巨大な借金のリスクを先送りしながら。

 政権がそのような安易な立場をとり続けるとき、現実的ではあっても不人気な対案を野党が示すのは簡単ではなかろう。

 それにしても先の衆院選での与野党の経済論争はひどかった。あちらが消費税の減税と言えば、こちらは廃止、こちらが18歳以下に給付金10万円と言えば、あちらは全員に10万円。こぞって人気取りに走った。

 これぞ「バラマキ合戦」と、そこに冷や水を浴びせたのが財務省の矢野康治次官の月刊文芸春秋への寄稿である。

 「このままでは国家財政は破綻(はたん)する」。安倍・菅両政権下で官界を覆った「物言えば唇寒し」の空気を破ったその訴えは政界に波紋を広げ、自民党高市早苗政調会長の怒りを買った。ただ、正面きって反論する政治家はほとんどいない。指摘は図星だったのだ。

 国民も真摯(しんし)に受け止めた。消費税の減税・廃止論が飛び交う選挙戦のさなかにもかかわらず、朝日新聞が実施した世論調査では消費税を一時的にでも下げるより10%維持がよいと回答した人が57%を占めた。

 目先の支持を得たいがためだけの甘い公約は結局事態をいっそう悪化させ、負の遺産として積み残される。アベノミクスがもたらしたものも、けっしてバラ色の未来などではなかった。株価は急上昇した。けれどその間、成長率は低迷。実質賃金は伸びず国民の暮らし向きは良くならなかった。

     *

 半世紀前の英国経済も閉塞(へいそく)状態に陥っていた。本人の歴史的な評価はさまざまだろうが、再建した立役者はまちがいなく元首相サッチャーだ。側近は彼女の政治的資質として思想的確信、道徳的勇気、一貫性、鉄の意志に加え「愛されることを望まなかったこと」を挙げる。愛されない覚悟をもって自らの政治信念を訴えていく。それが国家的大変革には欠かせなかった。(冨田浩司「マーガレット・サッチャー」)

 「日本の未来に希望はあると思うか?」

 先月、福島県の中学生の授業を受け持った機会に、全員に聞いてみた。全員が「ない」と答えた。年に何回か受け持つ大学の授業でも同じ質問をぶつけてみるが、いつも9割以上の学生が「ない」と答える。いまの政治が、未来の財政や社会保障に確かな責任をもっておこなわれているとは思えないことを理由に挙げる学生が多い。

 日本財団が2年前、9カ国で実施した18歳調査でも、国の将来が「良くなる」と答えた日本の若者はわずか9・6%。先進国は総じて低めとはいえ、米国(30%)やドイツ(21%)と比べても際立って低い。

 愛されることを望み、愛される政策ばかりを示し続ける日本の政治。若者が希望を抱かない国は、その帰結なのではないか。

 (編集委員

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「身辺雑記」から

 アベノミクスとは金融緩和。安倍政権・日銀は一貫して、バブル相場(株価上昇)で大儲けする富裕層を優遇してきた。そもそも投資できる人たちには、それだけの資産があるということだ。その一方で、派遣切りや人員削減で仕事を失って、日々の生活に困窮する人が増えている。資産などあるはずもなく、わずかな預貯金を切り崩すしかない。

 経済格差は確実に拡大している。富裕層を優遇し税制でも助ける政府の姿勢をおかしいと思い、怒りの発露とするのか。それとも自分も富裕層になれたらいいなあと羨望し、酷い目に遭っているもの同士で非難し合うだけなのか。もちろん政財界が望むのは、怒りの矛先を政府に向けて是正しようなんてことは考えもしない従順な人々だろう。


モリ・カケは「既に処分が済んで結論が出ている」と平然と流してしまう菅首相

モリ・カケ・サクラ・マスク・カジノ汚職・カワイ選挙買収など数多くの犯罪行為に関わってきた共犯。つまり税金の私物化や公文書偽造・捏造・隠蔽・廃棄の当事者として、責任追及される側なんだけどね。そこには触れられず、すっかりなかったことのようにされている。

 自分たちの税金が大量にかすめ取られているというのに、新型コロナ対策もデタラメでちぐはぐなことしかやっていないのに、何が悲しくて安倍政権を評価なんかできるのだろう。メディアの多くも有権者もいったい何を考えているんだろう(何も考えていないのかも)。このままだと、残念ながらこの国はもうダメかもしれないね。 

しかし「安倍首相の辞任で終わり」にはならない。モリ・カケ・サクラ・マスク・コロナ・カワイ選挙買収・カジノ汚職など、安倍政権による数多くの犯罪行為を、決してうやむやに終わらせてはならない。前代未聞で最低最悪の「アベ政治」はまだまだ続く。「アベ政治を許さない」の看板を下ろすのはまだ早い。


そもそも全国一律の休校が、科学的・医学的にどれだけの効果があるのか、医師・研究者・専門家の間でも評価は分かれています。

 しかも学校現場だけでなく、家庭や社会への影響・混乱が大きいし、何の準備も説明もなく、唐突に一方的に「要請」したやり方は、いかにも場当たり的な思いつきで、行き当たりばったりとしか思えず、いつもの安倍晋三のパフォーマンスにしか見えません。


辺野古の軟弱地盤を無視した埋め立て強行も、森友・加計学園問題も、どれもこれも嘘だらけ。公文書や公的データの隠蔽・捏造・偽装まで行って、まともな説明をせずに開き直るのが安倍自民党だ。


あれだけ大量に大胆に改竄・隠蔽して国民と国会を欺きながら、「文書の根幹部分は失われていない」といった大阪地検特捜部の不起訴の理屈は成り立つはずがないし、成り立たせてはいけない。世間の常識からは著しく乖離している。この国は法治国家の体をなしていない。


5月21日(月曜日) あれもウソこれもデタラメ
 もうずっと前から大半の人は、安倍首相が権力を私物化し、大親友の加計孝太郎氏の獣医学部新設に便宜を図ったのは分かっているが、ここに来てさらに新たな証拠が登場。愛媛県が国会に提出した公文書によると、加計氏本人から説明を受けた安倍首相が「獣医学部いいね」と応じたというのだ。しかも3年前に。昨年1月に加計の獣医学部新設計画を初めて知った、という安倍首相の国会答弁はやはり大嘘だった。

 あれもウソこれもデタラメ。次々に隠蔽やごまかしが露呈する安倍政権。ほとんど公開処刑やさらしものといった様相だ。まともな感覚の持ち主なら恥ずかしくて耐えられないはずだけど、安倍首相は厚顔無恥だから何も感じない。だから平然と嘘をつき続けるのだろう。

 それにしてもここまでデタラメな首相を、それでもまだ3割が支持する日本国民っていったい……。国家(安倍自民党)の家畜なのか。洗脳されて飼い馴らされてしまっているのか。無自覚な奴隷根性が哀れで情けない。

 

 加計孝太郎理事長と安倍首相がオトモダチなのは、獣医師業界では有名な話。首相官邸主導の出来レースによって、最初から加計ありきで加計学園だけに獣医学部の新設が認められた。「国のやり方はフェアではないと思います」。京産大の大槻公一元教授の嘆きはもっともで、憤懣やるかたない気持ちは察するにあまりある。

 子どもたちに教育勅語を唱和させて「安倍首相万歳」と叫ばせる愛国小学校の開校を画策した森友問題にしても、教員も教育内容も劣っている欠陥学園の獣医学部新設をゴリ押しした加計問題にしても、本当に酷い話だと改めて思う。こんなデタラメと国政の私物化がまかり通る異常事態のすべての責任は安倍首相にある。そんな首相が教育や道徳をもっともらしく語る。この異様な状況に、心から怒りと矛盾と理不尽さを感じる。


 「行政に対する信頼が揺らいでいる。徹底的に調査して全容を解明し、うみを出し切って信頼を得るために立て直していきたい」と安倍首相がコメント。これを紹介した後の「報道ステーション」のナレーションが実に素晴らしかった。「一点の曇りもないはずなのに、どんなうみを出すのでしょうか」。いいね、すごくいい。皮肉たっぷりで切れ味も鋭く最高だった。原稿通りなのかアドリブなのかは分からないけど、いずれにせよグッジョブ。拍手。 〕

政治家と国民 2022/02/08

安倍・菅という・・ひどい・話にならない政権がようやく終って、人の話を聞くという岸田政権になって、コロナの中で、多少は落ち着いてTVのニュースも見られるようになったが・・。
「賃上げをして経済を活性化する」という。そんなニュースで改めて知ったことは、

「資本金1億円未満の企業は数では99%を占める・・のに、営業利益の内訳では17%しか稼げていない。」
「中小企業の7割は赤字で、賃上げ税制の恩恵を受けられるのは3割だけ。賃上げの原資を各社がつくりだせるよう、取引先や消費者への価格転嫁を後押しする政策が重要」

という。さらに分かったことは・・「中小企業は取引先との関係で弱い立場に・・企業の9割超が1年前よりコストが増えた一方、8割の企業がそれを商品価格に「全く転嫁できていない」。

コロナで、母子家庭の母親や、若い人の中にも「食べられない」人たちがふえて、中には食事を配布しているボランティア活動もある中で、政治とは社会の弱者は票にも関係ないことから、目の中にも入っていないようです。


〔 賃上げ減税、赤字なら無縁の話 首相の肝いり政策、中小企業の本音は―― 朝日 2021年12月29日 
12月13日、ものづくりの街、大阪府東大阪市自民党茂木敏充幹事長が姿を見せた。経営者6人との「車座対話」のためだ。去る時に、こう言った。

「賃上げを積極的にすすめる中小企業には、40%の法人税減税という思い切った措置を取っている」

岸田文雄首相の肝いりで拡充が決まった、「賃上げ税制」のことである。

ところが、北日本のある食品加工会社の社長は言う。「法人税がかからない赤字企業には無縁の話。あれは絵に描いた餅ですね」

コロナ禍で赤字になった大きな要因は、コストを価格に転嫁できないことだ。油が値上がり、小麦などの原材料や配送料が上がり……。「黒字にするため、しっかりコスト増を転嫁して取引先に示すよう社員に指示したことがあります」

取引先の反応は「だったら他に仕事を回す」だった。いくつもの仕事をライバルに奪われた。

社長は言う。「コスト増の価格転嫁を拒否するのは、下請法から考えてアウトですよね」

では、公正取引委員会に告発しますか?

「ぜったいしません。犯人捜しがはじまり、必ずばれます。業界全体で報復されるだけです」

内部告発者が泣く、それが、この国の現実である。

岸田首相は、今月6日の所信表明演説で「賃上げに向けた環境を整えます」と約束した。27日には「下請けGメン」の倍増など、価格転嫁を後押しする政策パッケージを公表した。

ただ、この社長は公取も政府も信じていない。

福岡県の、とある警備会社。工事現場の交通整理やイベントの警備などをしている。社長は言う。「うちは黒字で法人税を払っていますが、今回の制度は使えません」

警備の仕事はなり手が少ない。社員を引き留めるためもあって、この7年ほどで賃金を25%上げてきた。だが、社員の高齢化もあって社員の数が減っている。「給与総額が増えない。減税なんか、いりませんよ」

「賃上げ税制」は働き手への給与の増加額の一部を、企業の法人税から差し引く制度だ。来年度の税制改正大綱で、中小企業は控除率を最大40%に引き上げることが決まった。税の優遇措置としては破格の水準という。中小企業の場合、全雇用者の給与支給総額が増えていることが適用の基準だ。(編集委員・中島隆)


今回の「ニンジン政策」をどう評価するか、聞いてみたい人物がいた。

守和彦さん、78歳。

理想の経営者になろうと努力し、社員や社会の幸せを考える団体「北海道中小企業家同友会」で、18年にわたって代表をつとめた人物である。

守さんは言った。

「社員の賃金を上げたいと、中小企業経営者はみんな思ってんだ。でもさ、この制度、多くの中小企業は使えないね」

そもそも中小企業の6~7割は赤字、法人税を払っていないからだ。

北海道の経済は農業や漁業などの1次産業、飲食や観光などの3次産業に多くを頼る。だが、漁業は不振。コロナで飲食、観光は大打撃。「地域のことも考えていない。どうやって黒字にするんだ? 賃上げする原資、どうやって生み出すんだ?」

そもそも政治への不信は大きい。安倍政権のアベノミクスは大胆な金融政策や機動的な財政政策で景気を回復し、いずれ全国津々浦々に温かい風をお届けする、とやったが……。

「トリクルダウンは、ついに中小企業に来なかった。それだけでも政治に失望した。私たちとの距離が遠くなり、政策への信頼が薄れたね」

大阪府東大阪市にある町工場の2代目社長は言う。「今回の賃上げの制度を使ったら、うちの会社は崩壊する。ぜったい使わない」

この工場は数年前まで、社長の気まぐれで「ハイ、月給5千円賃上げね」などとやっていた。そんなどんぶり勘定をやめて、良い会社になろうと社長は考えた。賃上げは、社員の成長の対価と結論づけた。そして、給料を決める客観的な人事制度を築いた。

製品をつくる能力、CAD(コンピューター支援設計)が使えるか、チームワークに気をくばっているか、あいさつができるか……。数十にわたる項目をつくり、できているかどうかを得点化し、総合点で賃金を決めることにしたのだ。

社員は、がぜんやる気になった。会社が何を評価してくれるのかが分かったからだ。

賃上げに積極的なら法人税をまける。そんな「ニンジン」に飛びついたら……。「なあんだ、結局、社長は金目じゃないか、と思うでしょう。カネに飛びつき、自分たちを金もうけの道具としか思っていない、と感じるでしょう。うちの根幹が崩れる」

大企業は制度を使っても使わなくても、来年の春闘で賃上げするだろう。一方、中小企業の賃上げは広がりそうもない。その結果、大企業と中小企業の働き手の格差が、ますます広がるのは確実である。

賃上げしない中小企業は、悪者ですか?

ふりかえれば、中小企業は、さんざん悪者扱いをされてきた。生産性が低い、法人税を払わない……。そもそも、だれが赤字にしたんだ、めちゃくちゃなコストダウンをさせている大企業じゃないか。

1986年の約533万をピークに、ニッポンの中小企業の数は減りつづけている。2016年は約358万。この30年で約175万減、年間およそ6万のペースで減っている。

大阪府中小企業家同友会の、ある幹部は言った。

「社会を、地域を支えている中小企業の数が減る。これは、国力が衰えているということです」(編集委員・中島隆)

■弱い立場、価格転嫁できず

中小企業基本法に基づく中小企業の定義は業種によって異なるが、製造業だと資本金が3億円以下、または従業員数が300人以下の企業。製造業以外にも飲食店やホテルなどのサービス業や卸・小売業に多く、日本の全企業のうち99・7%を占める。国内の働き手の7割近い約3220万人の雇用の受け皿だ。

働く人の賃金は大企業と比べて低い。厚生労働省によると、2020年の平均年収は従業員数10~99人の企業が409万円、1千人以上だと591万円。差は180万円以上ある。

なぜなのか。中小企業庁によると、製造業の従業員が生み出す付加価値額は大企業が1人あたり1367万円なのに対し、中小企業は半分以下の554万円。財務省シンクタンク「財務総合政策研究所」の調査でも、資本金1億円未満の企業は数では99%を占めるのに、営業利益の内訳では17%しか稼げていない。

利益があがらない要因の一つに、価格転嫁の問題がある。中小企業は取引先との関係で弱い立場にあることが多く、原材料費や人件費の値上がりを商品やサービスの価格に反映できない。日本商工会議所による会員企業への調査では、企業の9割超が1年前よりコストが増えた一方、8割の企業がそれを商品価格に「全く転嫁できていない」「一部転嫁できていない」と回答した。

日商の加藤正敏・中小企業振興部長は「中小企業の7割は赤字で、賃上げ税制の恩恵を受けられるのは3割だけ。賃上げの原資を各社がつくりだせるよう、取引先や消費者への価格転嫁を後押しする政策が重要になる」と話す。

政府は賃上げ税制の拡充に加え、27日には発注元企業による「買いたたき」を防ぐ監視体制の強化や、価格転嫁に積極的な企業を公共事業で優遇することなどを新たな政策パッケージとしてまとめた。中小企業を取り巻く厳しい環境を改善できるのか、政策の実効性が問われている。(若井琢水)〕

私たちの意識とは  2021/11/05

社会の動きを、主に朝日新聞から記録しながら、思うことをひとこと書いてきたが、何か嵐のように駆け抜けていった選挙や社会の動きについて、しばらくぶりに「身辺雑記」を覗いてみた。日本でもアメリカでも、選挙とか民主主義というものに疑問も多く、選挙には参加していないのだが、社会とか人々の意識が見えてきて、争いを繰り返し地球を支配してきた人類の歴史は破壊を繰り返して、この先に光が見ないのだが・・。


 身辺雑記【大岡みなみ】
2021年
11月3日(水曜日) 「左傾化」ってなんだ
 とある名古屋発のワイドショーの司会者が「立憲民主党左傾化した」と発言するのを聞いて愕然とした。今どき「左傾化」という言葉遣いもどうかと思うが、そもそもそこには「右傾化ならいいけど左傾化はダメ」「自民党保守系以外はけしからん」といったバイアスを強く感じる。背景を掘り下げて吟味することもなく、上っ面の言葉だけを無批判に使うことが何より情けない。少しはまともな司会者(アナウンサー)かと思っていただけにがっかりした。

ワイドショーなどの情報番組にせよ報道ニュース枠にせよ、良識と良心と志のある筋の通ったまともなテレビ番組って、本当に限られているよなあ。


11月2日(火曜日) 維新とナチスの高揚感
 維新の根底に流れている考え方は、強烈な差別主義、人権軽視、多様性の否定、全体主義だ。表面的に語られる言葉やイメージ戦略は確かに上手いが、その裏にある「本心」が怖い。多くの人々が見事に洗脳されて踊らされる姿に、ナチス・ドイツファシズムやトランプ信者たちの高揚感が重なって見える。

 非自民党の「受け皿」が、詭弁や詐欺的手法をベースにした維新であっていいはずがない。そうなりつつあることに恐怖と強い危機感を覚える。

◇◇

 小選挙区での野党共闘は必要だったし意味もあったし、間違ってはいないと思う。弱点は連合の対応だった。立憲民主党枝野幸男代表は死に物狂いで、連合会長に食らいついて説明し説得すべきだった。何日も徹夜してでも。その上で、もっと丁寧に分かりやすいメッセージを有権者に伝えるべきだった。

 「身内のはず」の連合を説得し納得させられないようでは、無党派層・中間層・自民党支持層を引き込み共感を得るのは難しい。厄介で大変な作業だけど、そこは今後の重要な課題だ。枝野さんがやろうとしたことは決して間違ってはいないのだから、くじけずに頑張ってほしい。

 しかし枝野さんがそこまでやって、それでもどうしても連合が耳を傾けようとせず、反リベラルの姿勢を崩さないのであれば、立憲民主党は連合とはきっぱり袂を分かつことも覚悟していい。そうなったら、もはや「連合は市民・労働者の敵」と判断するしかあるまい。有権者には繰り返し丁寧に説明すればいい。

 自称政治ジャーナリストやワイドショーのコメンテーターらが、ここぞとばかりに立憲民主党と立憲幹部を揶揄し攻撃し、野党共闘を否定して分断しようとしているが、そんなものに踊らされてはいけない。権力を私物化し公文書の改竄や廃棄を平気でする連中に、この国の政治を任せるわけにはいかないし、そんな政治家を擁護する輩を相手にしてはいけない。ネトウヨのネットの書き込みなども同様だ。


11月1日(月曜日) 衆院選 
 自民党単独過半数の261議席を得て、自民・公明の両党で絶対安定多数の293議席を確保。立憲民主党共産党議席を減らし、維新は4倍近い41議席に躍進した。

 岸田文雄首相は衆院選の結果を受けた記者会見で、維新について「(自分たちと)同じ保守勢力である」と述べて、是々非々で対応を続けるとした。維新は自民党の「対抗勢力」ではなく、「仲間・身内・同類項」なのだ。これではチェック機能など果たせるはずがないし、異なる価値観や多様性が担保されることもない。緊張感のある議論も期待できない。やはり維新は自民党の党外派閥。一心同体だった。

 自民+維新の圧勝も立憲後退も諸々すべて含めて民意。しかしだからと言って立憲民主党が、これまで掲げてきた旗を降ろし、自民党になびく必要はない。維新や国民民主党の真似はしなくていい。支持し共感する有権者は確実にいるのだから。ただし訴え方と戦術と戦略は猛省し、もっと工夫したほうがいい。

 横浜の自宅に配達された今朝の朝日新聞は「15版」。1面の見出しは「自民、過半数を維持/立憲、共闘効果は限定的/岸田首相続投、維新3倍超」。


10月31日(日曜日) 衆院選投開票
 自民党単独過半数割れとなっても、甘利明幹事長や石原伸晃元幹事長が落選しても、維新が3倍以上に躍進するのでは全然うれしくない。時代錯誤の極右で大嘘つきで、平然とデマを撒き散らして民心を煽る。もしかしたら自民党よりも危うくてタチが悪いのが維新だからだ。維新が公明党以上に自民党の補完勢力(受け皿)となっていることに気づかず、騙されている人が多すぎる。

 自民党にちょっとお灸を据えるために、今回は「野党」に投票するかと考えた保守層や無党派層の多くが、「野党」の維新に一票を投じたのだろう。エセ野党なんだけどね。自民党と維新は親和性が高く、政治姿勢は極めて近い。維新は自民党の党外派閥だと考えたら、実質的には自民党単独過半数確保どころではない「圧勝」なのかもしれない。恐ろしい。もちろん分かっているとは思うけど、立憲民主党共産党は維新の躍進に強い危機感を持ってほしい。


10月26日(火曜日) 卑劣で気持ち悪い粘着
 眞子さんと小室圭さんの結婚記者会見。何をどう答えていくら説明しても、週刊誌記者やネットで罵声を浴びせ続けている連中が納得することはないだろう。根拠も裏付けもない予断と偏見と憶測に基づいた非難や質問は、およそ言い掛かりでしかなく、何を言っても聞く耳など最初から持っていないのだから、さらに突っ込んでくる。誹謗中傷、罵詈雑言、いじめとはそういうものだ。

 そこまで眞子さんと小室圭さんに執拗に粘着する「熱心さ」を、安倍晋三麻生太郎甘利明、加計幸太郎らになぜ向けない。彼らの刃は権力者には向かわない。圧倒的強者には沈黙し、反論や訴訟をしない(できない)相手を匿名で徹底的に袋叩きにする。卑劣さと気持ち悪さが際立っている。

 そもそも「金銭問題」なるものは、小室圭さん本人に責任のある事案ではなく母親の話だ。母親とその元婚約者との間の経済的争いである。離婚や相続などを巡るそんなトラブルは、世間に山のようにある。いちいち他人が関与するような話ではあるまい。犯罪でもないのに、ほっとけばいい。馬鹿馬鹿しい。

 日本雑誌協会の質問のゲスさは群を抜いていた。「小室さんの経歴に皇室利用と受けとめられかねないことがあると考えます」「眞子さまの婚約者という立場をいかして特別な待遇を受けたのではないかと疑念の声が上がっている」──。それって憶測の域を超えないのでは。そこまで言う根拠はあるのか。

 「誤った情報が事実であるかのような印象を与えかねない質問であると思います」「恐怖心が再燃し心の傷がさらに広がりそう」との眞子さんの回答はもっともだ。「圭さんがフィアンセとしてフォーダム大学に入学しようとしたという事実はありません」ときっぱり否定した。「疑念の声」の根拠を示す責任は雑誌側にある。

 相手は権力者ではない。ただの市民(民間人)だ。同じような質問を、自分自身や自分の家族がされたらどう答えるのだろう。「あなたの娘(息子)が◯△大学に入学したのは、記者の立場を生かして特別な待遇を受けたのではないか」と何回も聞かれ、否定しても繰り返し質問され続ける。それでも「丁寧に」対応するのか。本来あるべきジャーナリズムの職務とはほど遠いことに気付けよ。自問自答せよ。こんなのと一緒にされたらたまったものではない。

 ネットで眞子さんと小室圭さんに罵声を浴びせ続けている連中は、本気で「正義」だと思っているなら、本名を名乗って堂々と発言しなよ。ヤフコメの1行目に名前を書いてから、言いたいことを言えばいい。匿名で誹謗中傷し、根拠も示さず憶測で罵詈雑言を浴びせて袋叩きにするのは卑怯極まりない。

 諸悪の根源となってしまったヤフコメは廃止すべきだ。コメント欄のないニュースも存在しているのだから、なくても困らないだろう。どうしても必要なら、責任ある実名投稿に切り替えるべきだ。内部告発をするなら、ヤフコメがなくても匿名でできる場所はいくらでもある。


10月23日(土曜日) 白票でなく「よりマシ」に投票を
 この記事の書き方だと、結局は白票を推奨しているようにしか受け取れない。極めて危うい世論誘導だ。「棄権するくらいなら白票でも票を投じた方がいい」「白票が増えることで議論の種になり得る」「まず投票に行くことが重要」──。白票は棄権と同じ。無効票にカウントされるだけで、何の意思表示にもならない。白紙委任に等しい。投票するならしっかり吟味し、よりマシな候補者と政党の名前を書いて、主権者たる国民の権利を行使しましょう。それが主権者の責任であり義務です。


10月22日(金曜日) 眞子さん婚約バッシングはいじめ
 作家の森まゆみさんがきょう22日付朝日新聞の寄稿で、秋篠宮家の眞子さんにエールを送り、バッシング報道と世論を批判した。全く同感。プライバシーや結婚の自由も否定し、反論できない相手を袋叩きにするのはいじめでしかない。婚約者と家族に対するバッシングも同様だ。そこまで皇族を非難するなら、皇室も天皇制ももう廃止すればいいんじゃないかな。

 自分の意思でその家に生まれたわけでもないのに、不自由で窮屈で人権もない生活を強いられ、挙句にプライバシーを侵害され、無責任な憶測や誹謗中傷にさらされる。結婚することでしか皇室から離脱できず、その結婚すら自由にできないなんて、あまりにもかわいそうで非人道的だ。

 職務上必要とする情報は別として、皇室には特別な感情も関心もほとんどないが、眞子さんをはじめ皇室とその周辺をめぐるこうした状況に深く同情する。ろくでもない記事を書き散らしてきたメディアと、無責任にバッシングを続けている卑怯者を心底軽蔑する。恥を知るべし。


10月21日(木曜日) 連合は時代遅れで狭量だ
 立憲民主党共産党選挙協力や共闘に反発し、嫌悪感を示す連合。時代遅れで狭量で現状認識ができていない。確かにかつての共産党は排他的で独善的で教条主義的だったと思うが、相当努力したのか最近は寛容で協調性がある。大変身したように見える。そこは理解して、大局的視点で受け止めるべきだろう。

 政権交代を目指す責任政党の支持母体を自覚するのであるならば、そして本気で市民や労働者や弱者の側に立つ労働組合であると自認するのなら、連合は懐の深さと器の大きさを示すべきだ。

 原発についても、非効率的な経済性や矛盾や危険性を踏まえて、連合にはもっと危機意識と大局的視点を持って動いてほしい。電力系労働者の目先の利益を守ることだけに固執していては、幅広い市民の共感と信頼は得られない。それでは既得権益の維持しか頭にない電力幹部や経営団体幹部、保守政治家と何も変わらない。


10月20日(水曜日) 選挙権行使の大切さ
  先週に続いて今日の講義でも少しだけ時間を割いて、選挙権行使の大切さについて触れた。「ジャーナリズムの最も重要な役割は権力監視。主権者に判断材料を伝えるためだ」と説明した上で。学生からは「選挙は政治に関われる機会。しっかり権利を行使したい」「報道の役割と選挙権の重要性を改めて理解した。権力を監視するために選挙に行かなければ」などの反応。衆院選まであと11日。来週もしつこく選挙権行使を促すぞ。


10月18日(月曜日) 岸田首相だけ挙手しない
 日本記者クラブ主催の党首討論会で、「選択的夫婦別姓」と「LGBT法案」に賛成かと問われ、9党首の中で岸田文雄首相(自民党総裁)一人だけが挙手しない光景は異様だった。一律にすべて夫婦別姓とするのではなく、別姓を選択する自由さえ認めない理不尽。それのどこが「多様性」を認める社会だというのか。「LGBT」の理解を促すことを拒む。その理由もさっぱり分からない。

 国民の多くは「選択的夫婦別姓」「LGBT法案」を支持している。今さら「国民の皆さんの意識がどこまで進んでいるのか考えていくことが重要」などと言う段階ではなかろう。そんな意味不明の理由を述べるとは、世界の趨勢からも日本国民の意識からも2周も3周も遅れているのでは。自民党議員の意識と感性は、時代の流れから大きく取り残されている。


10月14日(木曜日) 立憲と共産に期待
 衆院解散。19日公示、31日投開票。岸田文雄首相の記者会見の生中継後にNHKが流した各党党首の演説映像の中では、立憲民主党枝野幸男代表の訴えが最も迫力があって、分かりやすく心に響いた。編集にも悪意がなく配慮が感じられた(たぶん)。会見での首相の冒頭発言はそこそこまとまっていたが、そんなものとは比較にならないほど説得力があった。

 報道ステーションテレビ朝日)の9党首討論は短い時間ながら見ごたえがあった。発言の中で説得力があって分かりやすかったのは、立憲民主党枝野幸男代表と共産党志位和夫委員長。成長と分配、富裕層に応分の負担を求め貧困層は減税する税制是正、アベノミクスの失敗など、言うべきことを端的に訴えていた。維新の妄言や挑発は、いちいち相手にしなくていい。連中の土俵に上がるのは時間の無駄。

 司会の大越健介キャスターは珍しく手際よく、有無を言わさぬ毅然とした姿勢で指名することで、リズミカルにさばいていたと思う。進行に無駄がなくテンポがいい。NHKの党首討論よりもはるかに安心して見ていられた。司会に徹する分には適役かも。