私たちは、いま、地球の・・いつ・どこにいるのか   2023/01/10

ウクライナでは、人々が、知らない間に殺されている。多くの生物が生きる地球は、人間によってどのようにされてしまうのだろうか・・・。教育・科学技術・文明の発達とは何なのか。

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〔(社説)人口80億人 地球の限界を考える  朝日 2023年1月10日 

人間のくらしは地球何個分?
 世界の人口が昨年11月に国連の推計で80億人を超えた。

 人間は文明の発達とともに養える人口を増やしてきた。技術が進歩して食糧を増産し、利用できる土地や資源も広がった。農業や産業革命といった大きな技術革新で急速に増えてきた。

 今後、人間が必要とする物資を効率的に得る飛躍的な技術革新が起きたり、人口が減少して食糧やエネルギーを分かち合ったりして暮らしていけば、明るい未来を描けそうだ、といった楽観論もあるかもしれない。

 半面、地球が生産できる生物資源も、利用できる地下資源も無限ではない。

 いま、地球は、どれくらいの人口を抱えられるのだろうか。

 ■地球の力

 人間が地球環境にどれだけの負荷を与えているかを知るひとつの指標がある。「エコロジカル・フットプリント」という。「生態系を踏みつけている足跡」という意味で、カナダの学者らが提唱した。

 人間の生活や経済活動によって農地や森林などの陸地や、漁場となる海をどれだけ使っているかを示す。統計データなどを元に、食糧や衣類の生産、廃棄物の分解や化石燃料の活用で排出された二酸化炭素を吸収するのに必要な土地なども計算に入れる。地球が1年間でまかなえる量で人間が生活をしているかが、推定できる。

 国際組織「グローバル・フットプリント・ネットワーク」によると、世界人口が30億人余りだった1961年には人間は地球0・7個分の生活だったが、71年に1個分を超え、いまは1・8個分の暮らしだ。

 もし、世界中の人々が日本と同じ暮らしをしたら、地球が2・9個必要になる。米国と同じなら5・1個、中国なら2・4個、インドなら0・8個だ。

 裕福な生活ほど、1人あたりの消費は増える。同じ距離の移動でも、飛行機は鉄道や船より大量の燃料を使い、牛肉や豚肉は穀物よりも生産段階で多くの資源が必要だ。もちろん絶対的な指標ではないが、豊かで便利な生活は、それだけ未来に負荷をかけているさまが浮かぶ。

 ■高まる危機感

 昨年末開かれた生物多様性条約締約国会議(COP15)は、2030年までに地球の30%を保全する「30by30」など、生態系を守る新目標で合意した。高いハードルだが、危機感を世界が共有するあらわれでもある。化石燃料の消費やそれを原因とする気候変動も、地球に大きく負荷をかける。食糧生産のために森林を切り開いて農地を増やすのも同様だ。

 地球は46億年の歴史で5回の大量絶滅を経験してきた。現在は、6500万年前に恐竜などが絶滅した時代に続く第6の大量絶滅時代と呼ばれ、当時よりも急速に生物種が減っている。約800万種いるとされる動植物のうち約100万種が絶滅の危機に直面し、絶滅の勢いは、過去1千万年間の平均の数十倍から数百倍も早まっている。人間による破壊力はすさまじい。

 ■循環型社会にむけて

 自然の破壊が一定の境界を越えると回復不可能となり、人類が繁栄を続けることができない。「プラネタリー・バウンダリー」(地球の限界)という考え方では、人間が地球の機能に変化を引き起こす九つの要素を特定して、越えてはいけない境界を示している。

 すでに「生物多様性」「窒素とリンの循環」「気候変動」「土地利用の変化」でリスクが顕在化して、人間が安全に活動していく範囲を超えていると分析される。窒素やリンは肥料として食糧生産を支えるが、過剰だと川や海の汚染を招く。

 地球の人口は2050年代に100億人を超え、2080年代に104億人でピークを迎えると推定されている。その先、減少を続けて安定的な人口になっていくとしても、それまで、生活を支える地球の限界を人類は超えずにすむのだろうか。

 国を超える共通課題に一つひとつ取り組み、社会のあり方を考え直すことが求められる。循環型の社会づくりは、地球のためでも自然のためでもなく、人間の未来のためだ。

 80億人突破を機に、地球の現状と生活を見つめ直し、子孫に何を残せるか考えていきたい。〕