政治家と国民 2022/02/08

安倍・菅という・・ひどい・話にならない政権がようやく終って、人の話を聞くという岸田政権になって、コロナの中で、多少は落ち着いてTVのニュースも見られるようになったが・・。
「賃上げをして経済を活性化する」という。そんなニュースで改めて知ったことは、

「資本金1億円未満の企業は数では99%を占める・・のに、営業利益の内訳では17%しか稼げていない。」
「中小企業の7割は赤字で、賃上げ税制の恩恵を受けられるのは3割だけ。賃上げの原資を各社がつくりだせるよう、取引先や消費者への価格転嫁を後押しする政策が重要」

という。さらに分かったことは・・「中小企業は取引先との関係で弱い立場に・・企業の9割超が1年前よりコストが増えた一方、8割の企業がそれを商品価格に「全く転嫁できていない」。

コロナで、母子家庭の母親や、若い人の中にも「食べられない」人たちがふえて、中には食事を配布しているボランティア活動もある中で、政治とは社会の弱者は票にも関係ないことから、目の中にも入っていないようです。


〔 賃上げ減税、赤字なら無縁の話 首相の肝いり政策、中小企業の本音は―― 朝日 2021年12月29日 
12月13日、ものづくりの街、大阪府東大阪市自民党茂木敏充幹事長が姿を見せた。経営者6人との「車座対話」のためだ。去る時に、こう言った。

「賃上げを積極的にすすめる中小企業には、40%の法人税減税という思い切った措置を取っている」

岸田文雄首相の肝いりで拡充が決まった、「賃上げ税制」のことである。

ところが、北日本のある食品加工会社の社長は言う。「法人税がかからない赤字企業には無縁の話。あれは絵に描いた餅ですね」

コロナ禍で赤字になった大きな要因は、コストを価格に転嫁できないことだ。油が値上がり、小麦などの原材料や配送料が上がり……。「黒字にするため、しっかりコスト増を転嫁して取引先に示すよう社員に指示したことがあります」

取引先の反応は「だったら他に仕事を回す」だった。いくつもの仕事をライバルに奪われた。

社長は言う。「コスト増の価格転嫁を拒否するのは、下請法から考えてアウトですよね」

では、公正取引委員会に告発しますか?

「ぜったいしません。犯人捜しがはじまり、必ずばれます。業界全体で報復されるだけです」

内部告発者が泣く、それが、この国の現実である。

岸田首相は、今月6日の所信表明演説で「賃上げに向けた環境を整えます」と約束した。27日には「下請けGメン」の倍増など、価格転嫁を後押しする政策パッケージを公表した。

ただ、この社長は公取も政府も信じていない。

福岡県の、とある警備会社。工事現場の交通整理やイベントの警備などをしている。社長は言う。「うちは黒字で法人税を払っていますが、今回の制度は使えません」

警備の仕事はなり手が少ない。社員を引き留めるためもあって、この7年ほどで賃金を25%上げてきた。だが、社員の高齢化もあって社員の数が減っている。「給与総額が増えない。減税なんか、いりませんよ」

「賃上げ税制」は働き手への給与の増加額の一部を、企業の法人税から差し引く制度だ。来年度の税制改正大綱で、中小企業は控除率を最大40%に引き上げることが決まった。税の優遇措置としては破格の水準という。中小企業の場合、全雇用者の給与支給総額が増えていることが適用の基準だ。(編集委員・中島隆)


今回の「ニンジン政策」をどう評価するか、聞いてみたい人物がいた。

守和彦さん、78歳。

理想の経営者になろうと努力し、社員や社会の幸せを考える団体「北海道中小企業家同友会」で、18年にわたって代表をつとめた人物である。

守さんは言った。

「社員の賃金を上げたいと、中小企業経営者はみんな思ってんだ。でもさ、この制度、多くの中小企業は使えないね」

そもそも中小企業の6~7割は赤字、法人税を払っていないからだ。

北海道の経済は農業や漁業などの1次産業、飲食や観光などの3次産業に多くを頼る。だが、漁業は不振。コロナで飲食、観光は大打撃。「地域のことも考えていない。どうやって黒字にするんだ? 賃上げする原資、どうやって生み出すんだ?」

そもそも政治への不信は大きい。安倍政権のアベノミクスは大胆な金融政策や機動的な財政政策で景気を回復し、いずれ全国津々浦々に温かい風をお届けする、とやったが……。

「トリクルダウンは、ついに中小企業に来なかった。それだけでも政治に失望した。私たちとの距離が遠くなり、政策への信頼が薄れたね」

大阪府東大阪市にある町工場の2代目社長は言う。「今回の賃上げの制度を使ったら、うちの会社は崩壊する。ぜったい使わない」

この工場は数年前まで、社長の気まぐれで「ハイ、月給5千円賃上げね」などとやっていた。そんなどんぶり勘定をやめて、良い会社になろうと社長は考えた。賃上げは、社員の成長の対価と結論づけた。そして、給料を決める客観的な人事制度を築いた。

製品をつくる能力、CAD(コンピューター支援設計)が使えるか、チームワークに気をくばっているか、あいさつができるか……。数十にわたる項目をつくり、できているかどうかを得点化し、総合点で賃金を決めることにしたのだ。

社員は、がぜんやる気になった。会社が何を評価してくれるのかが分かったからだ。

賃上げに積極的なら法人税をまける。そんな「ニンジン」に飛びついたら……。「なあんだ、結局、社長は金目じゃないか、と思うでしょう。カネに飛びつき、自分たちを金もうけの道具としか思っていない、と感じるでしょう。うちの根幹が崩れる」

大企業は制度を使っても使わなくても、来年の春闘で賃上げするだろう。一方、中小企業の賃上げは広がりそうもない。その結果、大企業と中小企業の働き手の格差が、ますます広がるのは確実である。

賃上げしない中小企業は、悪者ですか?

ふりかえれば、中小企業は、さんざん悪者扱いをされてきた。生産性が低い、法人税を払わない……。そもそも、だれが赤字にしたんだ、めちゃくちゃなコストダウンをさせている大企業じゃないか。

1986年の約533万をピークに、ニッポンの中小企業の数は減りつづけている。2016年は約358万。この30年で約175万減、年間およそ6万のペースで減っている。

大阪府中小企業家同友会の、ある幹部は言った。

「社会を、地域を支えている中小企業の数が減る。これは、国力が衰えているということです」(編集委員・中島隆)

■弱い立場、価格転嫁できず

中小企業基本法に基づく中小企業の定義は業種によって異なるが、製造業だと資本金が3億円以下、または従業員数が300人以下の企業。製造業以外にも飲食店やホテルなどのサービス業や卸・小売業に多く、日本の全企業のうち99・7%を占める。国内の働き手の7割近い約3220万人の雇用の受け皿だ。

働く人の賃金は大企業と比べて低い。厚生労働省によると、2020年の平均年収は従業員数10~99人の企業が409万円、1千人以上だと591万円。差は180万円以上ある。

なぜなのか。中小企業庁によると、製造業の従業員が生み出す付加価値額は大企業が1人あたり1367万円なのに対し、中小企業は半分以下の554万円。財務省シンクタンク「財務総合政策研究所」の調査でも、資本金1億円未満の企業は数では99%を占めるのに、営業利益の内訳では17%しか稼げていない。

利益があがらない要因の一つに、価格転嫁の問題がある。中小企業は取引先との関係で弱い立場にあることが多く、原材料費や人件費の値上がりを商品やサービスの価格に反映できない。日本商工会議所による会員企業への調査では、企業の9割超が1年前よりコストが増えた一方、8割の企業がそれを商品価格に「全く転嫁できていない」「一部転嫁できていない」と回答した。

日商の加藤正敏・中小企業振興部長は「中小企業の7割は赤字で、賃上げ税制の恩恵を受けられるのは3割だけ。賃上げの原資を各社がつくりだせるよう、取引先や消費者への価格転嫁を後押しする政策が重要になる」と話す。

政府は賃上げ税制の拡充に加え、27日には発注元企業による「買いたたき」を防ぐ監視体制の強化や、価格転嫁に積極的な企業を公共事業で優遇することなどを新たな政策パッケージとしてまとめた。中小企業を取り巻く厳しい環境を改善できるのか、政策の実効性が問われている。(若井琢水)〕