私たちの意識とは  2021/11/05

社会の動きを、主に朝日新聞から記録しながら、思うことをひとこと書いてきたが、何か嵐のように駆け抜けていった選挙や社会の動きについて、しばらくぶりに「身辺雑記」を覗いてみた。日本でもアメリカでも、選挙とか民主主義というものに疑問も多く、選挙には参加していないのだが、社会とか人々の意識が見えてきて、争いを繰り返し地球を支配してきた人類の歴史は破壊を繰り返して、この先に光が見ないのだが・・。


 身辺雑記【大岡みなみ】
2021年
11月3日(水曜日) 「左傾化」ってなんだ
 とある名古屋発のワイドショーの司会者が「立憲民主党左傾化した」と発言するのを聞いて愕然とした。今どき「左傾化」という言葉遣いもどうかと思うが、そもそもそこには「右傾化ならいいけど左傾化はダメ」「自民党保守系以外はけしからん」といったバイアスを強く感じる。背景を掘り下げて吟味することもなく、上っ面の言葉だけを無批判に使うことが何より情けない。少しはまともな司会者(アナウンサー)かと思っていただけにがっかりした。

ワイドショーなどの情報番組にせよ報道ニュース枠にせよ、良識と良心と志のある筋の通ったまともなテレビ番組って、本当に限られているよなあ。


11月2日(火曜日) 維新とナチスの高揚感
 維新の根底に流れている考え方は、強烈な差別主義、人権軽視、多様性の否定、全体主義だ。表面的に語られる言葉やイメージ戦略は確かに上手いが、その裏にある「本心」が怖い。多くの人々が見事に洗脳されて踊らされる姿に、ナチス・ドイツファシズムやトランプ信者たちの高揚感が重なって見える。

 非自民党の「受け皿」が、詭弁や詐欺的手法をベースにした維新であっていいはずがない。そうなりつつあることに恐怖と強い危機感を覚える。

◇◇

 小選挙区での野党共闘は必要だったし意味もあったし、間違ってはいないと思う。弱点は連合の対応だった。立憲民主党枝野幸男代表は死に物狂いで、連合会長に食らいついて説明し説得すべきだった。何日も徹夜してでも。その上で、もっと丁寧に分かりやすいメッセージを有権者に伝えるべきだった。

 「身内のはず」の連合を説得し納得させられないようでは、無党派層・中間層・自民党支持層を引き込み共感を得るのは難しい。厄介で大変な作業だけど、そこは今後の重要な課題だ。枝野さんがやろうとしたことは決して間違ってはいないのだから、くじけずに頑張ってほしい。

 しかし枝野さんがそこまでやって、それでもどうしても連合が耳を傾けようとせず、反リベラルの姿勢を崩さないのであれば、立憲民主党は連合とはきっぱり袂を分かつことも覚悟していい。そうなったら、もはや「連合は市民・労働者の敵」と判断するしかあるまい。有権者には繰り返し丁寧に説明すればいい。

 自称政治ジャーナリストやワイドショーのコメンテーターらが、ここぞとばかりに立憲民主党と立憲幹部を揶揄し攻撃し、野党共闘を否定して分断しようとしているが、そんなものに踊らされてはいけない。権力を私物化し公文書の改竄や廃棄を平気でする連中に、この国の政治を任せるわけにはいかないし、そんな政治家を擁護する輩を相手にしてはいけない。ネトウヨのネットの書き込みなども同様だ。


11月1日(月曜日) 衆院選 
 自民党単独過半数の261議席を得て、自民・公明の両党で絶対安定多数の293議席を確保。立憲民主党共産党議席を減らし、維新は4倍近い41議席に躍進した。

 岸田文雄首相は衆院選の結果を受けた記者会見で、維新について「(自分たちと)同じ保守勢力である」と述べて、是々非々で対応を続けるとした。維新は自民党の「対抗勢力」ではなく、「仲間・身内・同類項」なのだ。これではチェック機能など果たせるはずがないし、異なる価値観や多様性が担保されることもない。緊張感のある議論も期待できない。やはり維新は自民党の党外派閥。一心同体だった。

 自民+維新の圧勝も立憲後退も諸々すべて含めて民意。しかしだからと言って立憲民主党が、これまで掲げてきた旗を降ろし、自民党になびく必要はない。維新や国民民主党の真似はしなくていい。支持し共感する有権者は確実にいるのだから。ただし訴え方と戦術と戦略は猛省し、もっと工夫したほうがいい。

 横浜の自宅に配達された今朝の朝日新聞は「15版」。1面の見出しは「自民、過半数を維持/立憲、共闘効果は限定的/岸田首相続投、維新3倍超」。


10月31日(日曜日) 衆院選投開票
 自民党単独過半数割れとなっても、甘利明幹事長や石原伸晃元幹事長が落選しても、維新が3倍以上に躍進するのでは全然うれしくない。時代錯誤の極右で大嘘つきで、平然とデマを撒き散らして民心を煽る。もしかしたら自民党よりも危うくてタチが悪いのが維新だからだ。維新が公明党以上に自民党の補完勢力(受け皿)となっていることに気づかず、騙されている人が多すぎる。

 自民党にちょっとお灸を据えるために、今回は「野党」に投票するかと考えた保守層や無党派層の多くが、「野党」の維新に一票を投じたのだろう。エセ野党なんだけどね。自民党と維新は親和性が高く、政治姿勢は極めて近い。維新は自民党の党外派閥だと考えたら、実質的には自民党単独過半数確保どころではない「圧勝」なのかもしれない。恐ろしい。もちろん分かっているとは思うけど、立憲民主党共産党は維新の躍進に強い危機感を持ってほしい。


10月26日(火曜日) 卑劣で気持ち悪い粘着
 眞子さんと小室圭さんの結婚記者会見。何をどう答えていくら説明しても、週刊誌記者やネットで罵声を浴びせ続けている連中が納得することはないだろう。根拠も裏付けもない予断と偏見と憶測に基づいた非難や質問は、およそ言い掛かりでしかなく、何を言っても聞く耳など最初から持っていないのだから、さらに突っ込んでくる。誹謗中傷、罵詈雑言、いじめとはそういうものだ。

 そこまで眞子さんと小室圭さんに執拗に粘着する「熱心さ」を、安倍晋三麻生太郎甘利明、加計幸太郎らになぜ向けない。彼らの刃は権力者には向かわない。圧倒的強者には沈黙し、反論や訴訟をしない(できない)相手を匿名で徹底的に袋叩きにする。卑劣さと気持ち悪さが際立っている。

 そもそも「金銭問題」なるものは、小室圭さん本人に責任のある事案ではなく母親の話だ。母親とその元婚約者との間の経済的争いである。離婚や相続などを巡るそんなトラブルは、世間に山のようにある。いちいち他人が関与するような話ではあるまい。犯罪でもないのに、ほっとけばいい。馬鹿馬鹿しい。

 日本雑誌協会の質問のゲスさは群を抜いていた。「小室さんの経歴に皇室利用と受けとめられかねないことがあると考えます」「眞子さまの婚約者という立場をいかして特別な待遇を受けたのではないかと疑念の声が上がっている」──。それって憶測の域を超えないのでは。そこまで言う根拠はあるのか。

 「誤った情報が事実であるかのような印象を与えかねない質問であると思います」「恐怖心が再燃し心の傷がさらに広がりそう」との眞子さんの回答はもっともだ。「圭さんがフィアンセとしてフォーダム大学に入学しようとしたという事実はありません」ときっぱり否定した。「疑念の声」の根拠を示す責任は雑誌側にある。

 相手は権力者ではない。ただの市民(民間人)だ。同じような質問を、自分自身や自分の家族がされたらどう答えるのだろう。「あなたの娘(息子)が◯△大学に入学したのは、記者の立場を生かして特別な待遇を受けたのではないか」と何回も聞かれ、否定しても繰り返し質問され続ける。それでも「丁寧に」対応するのか。本来あるべきジャーナリズムの職務とはほど遠いことに気付けよ。自問自答せよ。こんなのと一緒にされたらたまったものではない。

 ネットで眞子さんと小室圭さんに罵声を浴びせ続けている連中は、本気で「正義」だと思っているなら、本名を名乗って堂々と発言しなよ。ヤフコメの1行目に名前を書いてから、言いたいことを言えばいい。匿名で誹謗中傷し、根拠も示さず憶測で罵詈雑言を浴びせて袋叩きにするのは卑怯極まりない。

 諸悪の根源となってしまったヤフコメは廃止すべきだ。コメント欄のないニュースも存在しているのだから、なくても困らないだろう。どうしても必要なら、責任ある実名投稿に切り替えるべきだ。内部告発をするなら、ヤフコメがなくても匿名でできる場所はいくらでもある。


10月23日(土曜日) 白票でなく「よりマシ」に投票を
 この記事の書き方だと、結局は白票を推奨しているようにしか受け取れない。極めて危うい世論誘導だ。「棄権するくらいなら白票でも票を投じた方がいい」「白票が増えることで議論の種になり得る」「まず投票に行くことが重要」──。白票は棄権と同じ。無効票にカウントされるだけで、何の意思表示にもならない。白紙委任に等しい。投票するならしっかり吟味し、よりマシな候補者と政党の名前を書いて、主権者たる国民の権利を行使しましょう。それが主権者の責任であり義務です。


10月22日(金曜日) 眞子さん婚約バッシングはいじめ
 作家の森まゆみさんがきょう22日付朝日新聞の寄稿で、秋篠宮家の眞子さんにエールを送り、バッシング報道と世論を批判した。全く同感。プライバシーや結婚の自由も否定し、反論できない相手を袋叩きにするのはいじめでしかない。婚約者と家族に対するバッシングも同様だ。そこまで皇族を非難するなら、皇室も天皇制ももう廃止すればいいんじゃないかな。

 自分の意思でその家に生まれたわけでもないのに、不自由で窮屈で人権もない生活を強いられ、挙句にプライバシーを侵害され、無責任な憶測や誹謗中傷にさらされる。結婚することでしか皇室から離脱できず、その結婚すら自由にできないなんて、あまりにもかわいそうで非人道的だ。

 職務上必要とする情報は別として、皇室には特別な感情も関心もほとんどないが、眞子さんをはじめ皇室とその周辺をめぐるこうした状況に深く同情する。ろくでもない記事を書き散らしてきたメディアと、無責任にバッシングを続けている卑怯者を心底軽蔑する。恥を知るべし。


10月21日(木曜日) 連合は時代遅れで狭量だ
 立憲民主党共産党選挙協力や共闘に反発し、嫌悪感を示す連合。時代遅れで狭量で現状認識ができていない。確かにかつての共産党は排他的で独善的で教条主義的だったと思うが、相当努力したのか最近は寛容で協調性がある。大変身したように見える。そこは理解して、大局的視点で受け止めるべきだろう。

 政権交代を目指す責任政党の支持母体を自覚するのであるならば、そして本気で市民や労働者や弱者の側に立つ労働組合であると自認するのなら、連合は懐の深さと器の大きさを示すべきだ。

 原発についても、非効率的な経済性や矛盾や危険性を踏まえて、連合にはもっと危機意識と大局的視点を持って動いてほしい。電力系労働者の目先の利益を守ることだけに固執していては、幅広い市民の共感と信頼は得られない。それでは既得権益の維持しか頭にない電力幹部や経営団体幹部、保守政治家と何も変わらない。


10月20日(水曜日) 選挙権行使の大切さ
  先週に続いて今日の講義でも少しだけ時間を割いて、選挙権行使の大切さについて触れた。「ジャーナリズムの最も重要な役割は権力監視。主権者に判断材料を伝えるためだ」と説明した上で。学生からは「選挙は政治に関われる機会。しっかり権利を行使したい」「報道の役割と選挙権の重要性を改めて理解した。権力を監視するために選挙に行かなければ」などの反応。衆院選まであと11日。来週もしつこく選挙権行使を促すぞ。


10月18日(月曜日) 岸田首相だけ挙手しない
 日本記者クラブ主催の党首討論会で、「選択的夫婦別姓」と「LGBT法案」に賛成かと問われ、9党首の中で岸田文雄首相(自民党総裁)一人だけが挙手しない光景は異様だった。一律にすべて夫婦別姓とするのではなく、別姓を選択する自由さえ認めない理不尽。それのどこが「多様性」を認める社会だというのか。「LGBT」の理解を促すことを拒む。その理由もさっぱり分からない。

 国民の多くは「選択的夫婦別姓」「LGBT法案」を支持している。今さら「国民の皆さんの意識がどこまで進んでいるのか考えていくことが重要」などと言う段階ではなかろう。そんな意味不明の理由を述べるとは、世界の趨勢からも日本国民の意識からも2周も3周も遅れているのでは。自民党議員の意識と感性は、時代の流れから大きく取り残されている。


10月14日(木曜日) 立憲と共産に期待
 衆院解散。19日公示、31日投開票。岸田文雄首相の記者会見の生中継後にNHKが流した各党党首の演説映像の中では、立憲民主党枝野幸男代表の訴えが最も迫力があって、分かりやすく心に響いた。編集にも悪意がなく配慮が感じられた(たぶん)。会見での首相の冒頭発言はそこそこまとまっていたが、そんなものとは比較にならないほど説得力があった。

 報道ステーションテレビ朝日)の9党首討論は短い時間ながら見ごたえがあった。発言の中で説得力があって分かりやすかったのは、立憲民主党枝野幸男代表と共産党志位和夫委員長。成長と分配、富裕層に応分の負担を求め貧困層は減税する税制是正、アベノミクスの失敗など、言うべきことを端的に訴えていた。維新の妄言や挑発は、いちいち相手にしなくていい。連中の土俵に上がるのは時間の無駄。

 司会の大越健介キャスターは珍しく手際よく、有無を言わさぬ毅然とした姿勢で指名することで、リズミカルにさばいていたと思う。進行に無駄がなくテンポがいい。NHKの党首討論よりもはるかに安心して見ていられた。司会に徹する分には適役かも。